美しいだけの恋じゃない
心の中で思わず愚痴る。


彼女達にとっては3階の化粧室が「私達の縄張り」という認識であったようだから。


実際にはどこかの部署の後輩の女性達に、あっけなく陣地を奪われてしまったようだけれど。


田中さんがチラッと言っていたように、やはり師岡さんは自己主張がしっかりしている人にはあまり強く出られないタイプなのかもしれない。


性格的にとても似通っているように感じる山本さんと金子さんも。


今度彼女達に何か言われて、それが理不尽だと感じたら、私も勇気を出して意見してみた方が良いのだろうか…。


流れでぼんやりとそう考えてしまったけれど、すぐに『イヤイヤ、ムリムリムリ』と否定した。


私が反撃したって、上手く行く筈がない。


きっと声が震えてしまってしどろもどろで視線もろくに合わせられず、そんな弱気な態度を見せてしまったら、更に相手を優位に立たせてしまい、酷い返り討ちに遭うに決まっている。


だからなるべく彼女達と対峙せずに済むように、イライラさせて攻撃される機会を与えないように、可能な限り逃げまくるしか私にできる事はない。


「私らより上の世代はもうほとんど残ってないし、接点もあんまりないからさ。これからはいよいよ大手を振って、ノビノビと過ごせる!って思ってたのに」


私が悶々と考え込んでいる間にも、彼女達のトークはどんどん展開して行く。
< 61 / 219 >

この作品をシェア

pagetop