美しいだけの恋じゃない
「飲み会の失態を私のせいにしようとして必死でさ。こっちは何十人ものオーダーを取り纏めなくちゃいけないんだよ?ちょっとした言い間違いくらい仕方ないと思わない?」

「だよねー」


朝のあの出来事が槍玉に上がらない訳がない。


彼女達にとってはこの上ない格好のネタなのだから。


失敗した…。


とてもじゃないけどこんな状況の中、出て行く勇気なんかない。


これじゃあ、いつまでここに足止めさせられる事か。


しばらく休んで行くつもりではあったけれど、それはあくまでも一人でひっそりと、心身の回復を待ちたかったからで。


自分への陰口を聞きながら密室の中で息を潜めていなくてはいけないなんて、休息どころか苦行以外の何物でもないではないか。


「っていうかあの女、そもそもホントに烏龍茶って言ったワケ?」


そこで山本さんが憎々しげに発言した。


「ホントはアイツ自身が『ウーロンハイ』とでも言ったんじゃないの?で、後からさも礼子がオーダーミスしたように誘導したとか」

「日にちが経ってから言われたって、当日誰が何を頼んだかなんて、いちいち覚えてないもんね」

「あ、やっぱそう思うー?」


師岡さんが意気揚々と質問返しをする。


「思う思う。門倉保を落とす絶好の機会だし」

「案の定まんまとお持ち帰りされたんでしょ?悪知恵が働くよねー」


私はギョッとした。
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