美しいだけの恋じゃない
「え?あー…」

「確か礼子、会場のお座敷の入口で待機してて、来た順にメニューを見せてどの飲み物が良いか選ばせてたんだよね」


言い淀んだ師岡さんの代わりに山本さんが答える。


「で、自分の手帳にメモしていって、その後店員にまとめてオーダーしたんじゃなかった?」

「あ、そ、そうね」

「幹事ってホント大変だよねー。飲み物が来たら、今度はそれを店員と手分けして皆に振り分けてさー」

「だったら、その時のメモが礼子の身の潔白を証明してくれるんじゃないの?須藤がその時点で何をオーダーしたのかが分かるじゃない」

「そうだよ。アイツをギャフンと言わせるチャンスじゃん!ちょっと、手帳見せてみ?」

「そ、そんなのとっくに捨てちゃったわよー」


興奮している二人に向けて、若干圧倒されたように師岡さんが言葉を返した。


「え?」

「すっごい殴り書きで、もし誰かに見られたら恥ずかしかったし。それに、そんなの残しておいてもしょうがない情報じゃない。メモしたページは切り取ってさっさと捨てちゃったわよー」

「なんだぁ」

「残念!」

「べ、別にそれはもう良いわよ」


焦ったようにそう言ってから、師岡さんは話を進めた。


「例え烏龍茶以外が書かれていたとしたって、私が書き間違えたんだろうって言われたらそれまでだし。世間はやっぱりどうしたって小娘には甘いからさ」
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