美しいだけの恋じゃない
金子さんの発言を師岡さんと山本さんが慌てて遮り、いかにも焦ったような足音を響かせながら、彼女達はドアを開けて出て行った。
それでもしばらくの間、私は前屈みの姿勢で静かに待機し続け、自分の中で納得がいったタイミングで頬の涙を手のひらで拭いつつヨロヨロと立ち上がり、荷物を手に個室から出た。
洗面台まで歩を進め、正面の鏡を見やると、尋常じゃなく青白い、まるで生気の感じられない表情を浮かべた自分の姿が映り込んでいる。
そこでふいに、鞄に入れておいたケータイが震えた。
盛大に体をビクつかせ、条件反射的にそれを取り出し、ディスプレイを見た所で、さらに鼓動が早まる。
だけど、それと同時に何ともいえない感情が沸き起こり、気付いた時には受話器を上げるボタンを押して、ケータイを耳に当てていた。
「はい…」
『あ、みちる?』
無機質な電話機の向こうから、聞き慣れた、とても温かなお母さんの声が響いて来る。
『メール読んだわよー。ゴメンね?やっぱり声が聞きたくなって、かけちゃった』
「……ううん」
『お父さん、まだ帰って来ないからつまらなくて~』
「そうなんだ」
『でも、それだけお仕事頑張ってくれてるんだから、感謝しなくちゃね。美智瑠の方も大変でしょ?』
「うん」
単語ばかりでは何なので、頑張って長めの回答を口にしてみた。
それでもしばらくの間、私は前屈みの姿勢で静かに待機し続け、自分の中で納得がいったタイミングで頬の涙を手のひらで拭いつつヨロヨロと立ち上がり、荷物を手に個室から出た。
洗面台まで歩を進め、正面の鏡を見やると、尋常じゃなく青白い、まるで生気の感じられない表情を浮かべた自分の姿が映り込んでいる。
そこでふいに、鞄に入れておいたケータイが震えた。
盛大に体をビクつかせ、条件反射的にそれを取り出し、ディスプレイを見た所で、さらに鼓動が早まる。
だけど、それと同時に何ともいえない感情が沸き起こり、気付いた時には受話器を上げるボタンを押して、ケータイを耳に当てていた。
「はい…」
『あ、みちる?』
無機質な電話機の向こうから、聞き慣れた、とても温かなお母さんの声が響いて来る。
『メール読んだわよー。ゴメンね?やっぱり声が聞きたくなって、かけちゃった』
「……ううん」
『お父さん、まだ帰って来ないからつまらなくて~』
「そうなんだ」
『でも、それだけお仕事頑張ってくれてるんだから、感謝しなくちゃね。美智瑠の方も大変でしょ?』
「うん」
単語ばかりでは何なので、頑張って長めの回答を口にしてみた。