美しいだけの恋じゃない
「だけど、皆さん、良い人ばかりだから…。楽しくやりがいを持って、働かせていただいてるよ」

『そう、それは良かったわ』


安堵したような声音でお母さんは言葉を繋いだ。


『美智瑠を理解してくれる人ばかりみたいで、お母さん本当に安心した』

「え?」

『ここに至るまでに、色々と辛い思いをして来たもんねぇ…』


そこで一瞬だけ言葉を詰まらせてから、お母さんは掠れた声で続けた。


『学生時代、私達の知らない所で、酷いことを言われたりやられたり、して来たんでしょ?『生意気だと勘違いされた』とかいうレベルではなく』


私は思わず絶句してしまった。


『お母さんもお父さんもバカよね。あなたの『大丈夫』っていう言葉を鵜呑みにして、娘の本当の苦労も知らずにお気楽にのほほんと生活していたなんて』

「な、何でそれを…」


思わずそう問いかけてから『しまった』と後悔した。


これではしっかりはっきり、その言葉を肯定している事になってしまうではないか。


とっさに誤魔化せなかった事を心底悔やむ。


『昨日、国仲さん…歩美ちゃんのお母さんと、ショッピングセンターで久しぶりに会って…』


その返答ですぐに合点がいった。


歩美ちゃんというのは幼稚園の時からの幼なじみで、周り中敵ばかりだった私の数少ない理解者のうちの一人だ。


しかし幼なじみとはいっても、家が近所という訳ではない。
< 71 / 219 >

この作品をシェア

pagetop