美しいだけの恋じゃない
そこでふいに、遠き日の、陽気なおばさんの姿が音声付きで記憶の底から甦った。

ほぼ毎朝、幼稚園で会うと、明るく朗らかに、満面の笑みで挨拶してくれたっけ。


大きくなるにつれてお互いの家を訪問する機会は減っていったし、特にここ数年は歩美ちゃんと遊ぶ時は現地集合か、その途中の場所で待ち合わをしているから、おばさんとはすっかりご無沙汰になっている。

最後にきちんと目と目を合わせてご挨拶したのは、確か大学2年のお正月の帰省時だった。


だからなのだろうか。


直近のおばさんではなく、私と歩美ちゃんがまだ幼少期の頃の、現在の私とさほど年齢差はないであろう、若かりし頃の彼女が脳内スクリーンに映し出されたのは。

一番会う頻度が高く、最も印象深く記憶に刻まれる事となったその時代のおばさんの姿を、脳がとっさにチョイスしたのだろうか。


といっても20年近くも前の、物心がついて間もない、まだ識別能力や記憶力が充分に発達していないであろう年齢の頃に接していた人物のフォルムを、正確に覚えているとは思えないのだけれど。

おそらくあちこち勝手に補正されているのではないかと推測する。

とにかく浮かび上がったイメージは間違いなく、『ビジュアルが20代後半の歩美ちゃんのお母さん』だったのだ。


何ともいえない郷愁が込み上げ、とても幸せだった頃の記憶と相まって、感極まり、先ほどとは違う種類の涙が溢れそうになった。
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