美しいだけの恋じゃない
『その話を聞いているうちにお母さん、とっても情けなくなって来ちゃって…』


本格的に過去への思い出旅行に旅立ちそうになっていた私は、神妙なお母さんの声でこちら側に引き戻される。


『きっと何かしらのSOSは出ていた筈なのに。どうして当時、美智瑠の気持ちに気付いてあげられなかったのかしら、って。ほんと、母親失格だわ』

「え…」

『お父さんもお母さんも、小さい時からすごく恵まれていて、他人から嫌な思いをさせられたっていう経験があまりなかったから。それだけ人の悪意に鈍感で、それによって心に傷を負った人の痛みに疎くて、無自覚に無神経なのよね……』

「そんなっ」

『能天気で危機管理能力が低くて、つくづく、頼りにならない親だったと思うわ。本当にごめんなさい』

「そんな事ない!」


私はすぐさま否定した。


お母さんとお父さんが私の家族でいてくれて、どれだけ精神的に助けられていたか。


その清らかで美しい心根に癒されて、どれだけ救われていた事か。


『でもね』


その思いを余すところなく伝えたくて、だけど相応しい言葉が思い浮かばなくて、まごついている間に、お母さんは話を続けた。


『美智瑠が『助けて』って言ったら、私達すぐに駆け付けるから。『うちの可愛い娘に何するんだっ!』って、意地悪な人を追い払ってあげるから』


とても力強い声だった。
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