美しいだけの恋じゃない
彼の対応自体に非の打ち所はなかったのだけれど、相手がその心意気をきちんと受け止められるかどうかが問題で…。


ある予感を持ちながら、私は今度こそ給湯室へと向かうべく部屋を出た。


案の定、勢い良く席を立つ師岡さんの姿が視界の端に映る。


「さすが、男を味方につけるのが上手いわよね~」


室内に足を踏み入れるやいなや、後をつけて来た彼女に攻撃を仕掛けられた。


「私がコテンパンに叩かれて、さぞかし気分が良いでしょうねっ」

「そ、そんな…」


井上さんのあの正当なご意見を『叩き』と解釈するなんて…。


私も呆気に取られてしまったけれど、すでに中に居た別の部署の女性二人も、突然室内に響き渡った声に驚いたようにこちらを見た。


しかし、発言者が師岡さんであると確認した途端、さりげなく視線を逸らし、何事もなかったかのように作業を続ける。


彼女のエキセントリックぶりは他の課にも知れ渡っているようだし、触らぬ神に祟りなし、とでも考えたのだろう。


「言っとくけど私、あの課の中では一番のベテランなんですからね。全体の仕事の流れを見ていなくちゃいけないのよ!色んな事に気を回さなくちゃいけないの!そりゃ、あんたみたいに少ない仕事を時間をかけてやってれば、メールを見落としたりしないだろうしミスなんかもしないでしょうけどっ?」
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