キミの首輪に、赤い糸を。
「きさらぎはね、すっごく分かりにくいんだよ。どの表情も、どんな気持ちでいるのかあんまり読み取れない」


真白はどこを見るでもなく、視線を宙に向けていた。


「芸能人の人も、その人達のマネージャーさんも、『如月さんはいつも笑顔だね』って言うんだ。だけど、僕には分からなかった。きさらぎが笑ってるように見えなかった」


いつも一緒にいるからこそ、分からない。

如月さんは、まるで仮面をつけているみたいだ。


「...きさらぎの本当の顔、分かんない」


真白から感じた黒は、如月さんの影響もあったのかもしれない、とふと思った。

会ってまだ間もない頃に感じた真白の黒は、如月さんの黒...?


「...僕が...」

「ん?」

「僕が記憶を取り戻したら、きさらぎは本当の顔、見せてくれるかな」


真白の声色は、期待にも不安にも、そして罪悪感さえも感じた。


「なんとなく、きさらぎは遠い存在じゃない気がする」


確信を持っているように聞こえた。

だけど、真白の表情はどこか浮かないようだった。
< 149 / 231 >

この作品をシェア

pagetop