キミの首輪に、赤い糸を。
彼は丁寧に靴を揃えて入ってきた。


「はぁ...よかった、無事だったんですね」

「えぇ。外で倒れていらっしゃったので、勝手に家で看病してしまいました、すみません」

「いえいえ。勝手に出ていった彼が悪いんですよ。あなたのおかげで大事に至りませんでした。ありがとうございました」


本当、丁寧だなぁ。


「ん...」


彼の話を聞いていると、男の子が目を覚ました。

顔色は随分良くなっている。


「ん...?ここは?...あれ、きさらぎ...?」

「あぁ、起きたんだね。ここは彼女の家だ。彼女にお世話になったんだ、お礼を言って」


彼に促され、男の子は私を視界に捉え、「ありがとうごさいます」と頭を下げた。


「いえいえ」


私は小さく笑って首を振る。

すると彼は、すとんと私の横に座った。

それを見て、如月と呼ばれた彼はくすりと微笑んだ。


「真白は随分と貴女になついたようですね」

「えっ...?」


私は男の子の方を見る。

彼は真っ直ぐな瞳で私を見つめ、そして小さく微笑んだ。

可愛い。
それでいてなんだか儚くて、可憐な気もする。


「真白、彼女に自己紹介をしたらどうだ?」


男の子はそう言われて私を見て、「真白です。名字は...忘れちゃいました」と言った。

声はクラスの男子より若干高い。
真白って名前、合ってるなぁ。

って、名字忘れるってどういうこと?


「すみません、真白は過去の記憶を一部失っているんです。私は如月と申します。真白のマネージャー兼、飼い主です」


...一気に入ってきた情報があまりにも多くて突飛で、私の思考は停止しそうになった。


「貴女のお名前は?」

「え、あ、時森和咲です」


私は困惑したまま、自己紹介をした。
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