キミの首輪に、赤い糸を。
「ねぇ、真白。僕だけってどういう意味?」

「えっ?」


私が聞き返すと、真白は何かに気づいた様子で、みるみる顔を赤らめた。


「な、なんでもないっ!」


そんな真白の元に、陵さんが近づいて耳元で何かを言った。


「そんなんじゃ、俺に勝てねぇよ?」

「負けないし!いくらお兄ちゃんでも、譲らないよ。僕が和咲を幸せにするんだ」


小さな声での二人の会話は、私には聞こえない。




『この曲は、ある人のことを想って作ったんです。僕のことを大切にしてくれて、僕の大切なものも大切にしてくれる、すっごく大好きな人です。その人は、鈍感で天然なところがあるから、僕の気持ちも気づいてないかもしれないけど。』


テレビからの真白の声は、目の前にいる真白と陵さんの騒ぎ声によって掻き消され、私の耳には届かなかった。





私が真白をペットとしてではなく、特別な存在と再確認し、真白と陵さんとの間で揺れ動くのは、また別の話。



END.



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