瞳の奥の真実
 かき氷を買っていたら美優ちゃんが友達と話していた。

「ごめん、先に戻っていて」

 そう言われ、私は二つのカキ氷を手に、歩いていた。




 ……どうして見つけちゃうんだろう。

 あの後ろ姿。

 この人ごみの中で。



 私の視線に気が付いたように振り向く肩。

 真っ直ぐに私を見つめるあの眼。

 私と彼だけ別の世界にいるような感じがする。

 あの大きな花火の音さえも、遠くに感じる。

 私たち二人をすり抜けていくたくさんの人。

 時間が止まっているかのような私と彼。

 後ろから大きな男の子にぶつかられ、かき氷を落としてしまった瞬間、私たちの時間が動いた。
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