鬼社長のお気に入り!?
「ったくなんだよ、人がせっかく譲ってやってるのに……って、うわっ」


「ひゃぁ!!」


 最後に思い切り引っ張ろうとしたらいきなり八神さんが起き上がった。その弾みで私は八神さんのバスローブを掴んだまま後ろのベッドに倒れ込んでしまった。


「いったぁ……」


 ベッドのスプリングでバウンドして、目を開けるとそこに近距離で八神さんが目を細めて私を見下ろしていた。


 え……? こ、この体勢は……完全に八神さんに押し倒されてる――みたいな!?


「なんだ、意外に積極的なんだな」


「ち、ちちち違っ……これは――」


 全身に八神さんの熱が伝わってくると、あまりの恥ずかしさに肌がしっとりとしてくる。


「本当は女扱いして欲しいんだろ? だったらどうして欲しいんだ? 言ってみろ」


「そ、れは……」


 今にもキスされそうな距離で八神さんにそう囁かれる。見下ろすその瞳の中に私がいる。今、八神さんの目には私しか映っていない。
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