鬼社長のお気に入り!?
※ ※ ※



「おい、泣くなって」


「だって、すみません……私のせいで八神さんが嫌な思いしたと思うと……」


「あんなこと言われたぐらいでどうってことない、まぁ多少は気を乱されかかったけどな……」


 大成功に終わったセレモニーだったのに、八神さんの運転する車の中では重苦しい雰囲気に包まれていた。


「あと五秒で泣きやめ、じゃなきゃ車から引きずり下ろす」


「はい」


 ようやく気持ちも落ち着いてハンカチでごしごしと目元を拭う。


「でも、あの時声を掛けていただいたおかげで助かりました」


「別に。助けた覚えはない。俺は自分の所有するものが他人に触られるのが嫌いなだけだ」


 うぅ、所有って……私は物じゃないんだけどな――。


「まぁ、お前があいつを殴ってなきゃ、俺が手出してたかもな……余計なこと言いやがって」


「え……?」


「何でもない。忘れろ」」


 そういえば桐生さん、八神さんのこと「没落御曹司」とかなんとか言ってたっけ……? どういう事なんだろ――?


 八神さんの横顔を見ると、眉を潜めて複雑そうな顔をしている。
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