鬼社長のお気に入り!?
そう思って「先に帰ります」と置き手紙を残して私は玄関を出た。下へ降りて、事務所の窓をちらっと見ると社員が数人いたが八神さんの姿はなかった。置き手紙だけ残して帰ってしまう後ろめたさを感じつつ会社を離れようとした時だった。建物の陰った薄暗い路地で、見覚えのある後ろ姿が目に入って私は立ち止まった。
その後ろ姿は、誰かを覆いかぶさんばかりに誰かを抱きしめていた。
私の気配に気づいたのか、その後ろ姿がはっとして私に向き直った。
「あ、あぁ、杉野か」
「八神さん……」
八神さんが抱き抱えていたのは、やはり先日八神さんの玄関先で会った髪の長い女性その人だった。
「す、すみません! お邪魔するつもりはなかったんですけどっ」
「はぁ? なに慌ててんだ? 杉野、紹介するよ、俺の――」
「失礼します!!」
いやだ! いやだ! 八神さんの口から「婚約者の」なんて聞きたくない。私は咄嗟に逃げるように駅へ猛ダッシュしてその場から離れた。
その後ろ姿は、誰かを覆いかぶさんばかりに誰かを抱きしめていた。
私の気配に気づいたのか、その後ろ姿がはっとして私に向き直った。
「あ、あぁ、杉野か」
「八神さん……」
八神さんが抱き抱えていたのは、やはり先日八神さんの玄関先で会った髪の長い女性その人だった。
「す、すみません! お邪魔するつもりはなかったんですけどっ」
「はぁ? なに慌ててんだ? 杉野、紹介するよ、俺の――」
「失礼します!!」
いやだ! いやだ! 八神さんの口から「婚約者の」なんて聞きたくない。私は咄嗟に逃げるように駅へ猛ダッシュしてその場から離れた。