鬼社長のお気に入り!?
「あの、もし……話しづらいようなら――」


「いいんだ。なぁ、この前行ったセレモニーで桐生が言ってたこと覚えてるか?」


「はい、桐生さんは……八神さんの過去のことを知ってるように感じましたけど……」


「俺の親父の作った会社は、昔はちょっと名の知れた工業製品のメーカーだったんだ。その当時は景気の波に乗ってたし、それなりにいい暮らしをしてた。まぁ、それも俺が高校に入ってからはガラッと変わったけど……」


 これから八神さんが話すすべての事をただ黙って受け入れよう。そう思って八神さんの横顔を見つめると、その雰囲気を察したのか八神さんの口元が笑ったように見えた。


「その景気の波に乗って、社長である親父を筆頭にとあるプロジェクトチームを作ったんだ。実は加納さんもその時の一番若手のメンバーでさ……だから昔からの知り合いなんだよ」


「そうだったんですか……」


「そのプロジェクトを成功させれば、世界的にも会社を展開していけるって思っていた矢先に会社が倒産した」


 天国から地獄へ突き落とされたあの時の辛酸を思い出したのか、八神さんの表情が険しいものに変わる。
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