鬼社長のお気に入り!?
「桐生真人は親父が一番信頼してた秘書だった。毎朝うちの親父を車で送り迎えしてたから顔も知ってた。けど、そのプロジェクトの価値を知って魔が差したんだろ、表面では善人ぶっても裏でなに考えてるかわからないような男だったし、その息子もまた同じ人種だ。親父の会社と取引をしていた企業も連鎖倒産して、責任を感じた親父はなんとかしようと奔走したけど……結局それが祟って死んだ」


 聞くに耐えない壮絶な過去だった。八神さんは「くだらない話しだろ?」と言って力なく笑う。


「俺は六人兄弟の長男で加奈子は一番末っ子なんだよ、会社が倒産したその当時、まだ幼稚園にも入ってなくて、だから加奈子だけ養女として親戚に引き取られたんだ。あいつにだけは家族と過ごせない辛い思いをさせたからな、だから最近結婚が決まってようやく安心したっていうか……あ、この間会った時、抱きついてきたのは加奈子の方からだったんだぞ、その……なんだ、結婚が決まってホッとしたというか……」


 だからつい嬉しくて、八神さんの方から加奈子さんを抱きしめたってわけね……それを私は馬鹿みたいに勘違いしちゃったんだ。浅ましい自分が嫌になる――。


 私はそう思って心の中で溜息をついた。
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