鬼社長のお気に入り!?
「お前、やってくれるな。まさか、さすがにあんなことするなんて……やっぱりお前は俺の想像をはるかに超えた馬鹿だ」


「う……確かにそうかもしれませんね、だって……あの時は躊躇もありませんでしたし、データを上書きするチャンスがいきなり来たって思ったら身体が勝手に動いてました」


「桐生電機の社員がどうなっても知らんぞ」


「……きっとこれから桐生電機にとっては厳しい現状が待ってるかもしれません。でも、このままじゃだめだって思ったんです」


 自分のしたことを改めて振り返るとなぜか手が震え始めた。


 とんでもないことをした――。


 そう思うと間違ったことをしてしまったのではないかと怖くなった。


「ったく……」


「っ!?」


 八神さんのため息とともに腕を取られると、私はすっぽりと八神さんの腕の中へ引き込まれた。ほんのり煙草の香りがして、それが私の乱れかかった気持ちを落ち着かせてくれる。


「お前には負けたよ……」


「え……?」


「いや、なんでもない」


 今「お前には負けた」って言わなかった? あの八神さんがそんなこと言うなんて――。


 八神さんはそっと身を離して私ににこりと微笑んだ。私も笑みを返そうと頬を緩めたその時だった。
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