鬼社長のお気に入り!?
 夢のようなクリスマスの夜から数日が過ぎた。


 ここ数日は、ようやく八神さんと恋人同士になれたという実感がわかず、ほんわりとした日々を過ごしていた。


「杉野さん、北見川デパートで今度やるイベントの照明デザインの依頼が来てるんだけど、やってみない?」


「え……? あ、すみません、北見川デパートのなんですか?」


 いけない、ついぼーっとしちゃった……。仕事に集中――!


 私に声をかけてきた加納さんは小さく鼻でため息をついた。


「まぁ~ったく、クリスマスからなんか様子がおかしいと思ったら、八神さんとうまくいったわけ?」


「えっ!?」


「あっはは、杉野さんって嘘つけないタイプ? “めでたく両思いになりました”って顔に書いてあるよ」


 は、恥ずかしい……!! あまり顔に出さないほうだと思っていたけれど、どうやらそれは思い違いのようだ。


「で、さっきも言ったけど、北見川デパートの案件やるの? やらないの?」


 照明デザインなんて今までやったことがない。けれど、自分のデザインの幅を広げるにはいいチャンスかもしれない……でも――。


「お前、断って一ヶ月トイレ掃除と必死に頑張って実績を作るのとではどっちがいい?」


「っ!?」


 私が返事に悩んでいると、頭の上から低い声がして思わず肩をすくめた。
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