鬼社長のお気に入り!?
 高校の頃から親代わりで毎日兄弟たちに朝弁当を作ったり、夕食を作ったりしていたし、自分自身家事全般のことには自信があった。だから誰かの手料理には今まで興味もなかったのだが、俺はふと何故だかわからないが、彼女の手料理が食べてみたくなった。


 しかし、彼女が作ったものは俺の大嫌いな梅干が乗っかったうどんだった。


 なんて最悪なヤツなんだ……作ってくれと頼んだ手前食べないわけにもいかない。そう、食材には罪はない。だからといって梅干が食べられないなんて口が裂けても言えなかった。だから無理をして食べた結果、意外とイケた。これで俺は梅干を克服することができたのだ。それから彼女に思わず添い寝をしろと頼んでしまったが、彼女は素直に応じてくれた。まったく、男の部屋にひとりであがりこむなんて無防備にも程がある。けれど、講演会の終わったその日の夜、不眠症でろくに寝れなかった俺が夢も見ることなく熟睡できてしまったから、柄にもなく彼女といる安らぎに甘えたくなってしまったのだ。


 彼女といると安心する。


 そう思い始めたのはこの時からだった。
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