鬼社長のお気に入り!?
 退院の日がちょうどクリスマスなんてとんだ記念日だ。


 俺はとにかく彼女にとあるものを見せたくてうずうずしていた。それなのに杉野は堂々と遅刻をしてきた。相変わらずとろい女だ。けれど、そんなことはこの際どうでもいい。 彼女を連れて歩いていると街は恋人たちで溢れかえったいた。


 手くらい繋ぐか。


 そう言い出せば簡単なのに、結局彼女に手を出させてその冷え切った手を握った。指先まで冷たい彼女の手は小さくて可愛かった。当然そんな小っ恥ずかしい事を本人に言うこともなく、教会へ向かった。



 教会にたどり着くなり彼女はその外観に見とれていた。しかし、俺の見せたいものはそんなものじゃない。杉野がどんな顔をするか楽しみで教会の中へ連れて行くと、彼女は言葉を失うほど感動しているように見えた。


 俺は牧師に仕事を請ける代わりに条件を出した。クライアントに条件を出すなんてどんだけ上からな人間に思われたかわからない。けれど、二人だけのイルミネーションをどうしても彼女と見たかった。案外俺もロマンチストなところがあるのだと気恥ずかしくなった。しかし、彼女はそんな俺の気も知らずに俺が桐生電機を改め、エレクトロンに融資をした話をしてきた。


 な、なんでそんなこと知ってんだ……。


 彼女には内緒にしていたつもりだったが、どうやら杉野の元同僚に聞かされたらしい。まったく余計なことを言ってくれたもんだ。


 元々俺は人に情けをかけるような柄じゃない。


 けれど、嬉しそうな顔をしている彼女を見ていたら、そんなことはどうでもよくなった。
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