1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 翌日、学校に行こうとすると足が震えた。その足を無理矢理叱咤して、学校に向かう。
 いつも以上に前髪で顔を隠しているのに、それでも恐怖は消えない。

 隠しても、私が教室で“消える”ことは多分もうありません。
 静かな生活は昨日まで、もう、隠し通せるはずない。

 学校に近づくにつれて増える生徒、それに比例して視線が突き刺さる。

「ねぇ、あの子じゃない?」

「昨日、朔夜様に声をかけられた子でしょ?」

「あんなの顔見えないじゃない」

 こそこそと話しているつもりなのか。
 でも、そんな声でさえ私にははっきりと聞き取ることが出来る。
 情報集めには役立ちますが、悪口まですべて聞き取ってしまいます。

 学校の校門をくぐれば、更に視線、視線、視線。
 男も女も関係ありません。
 まだ嵐鬼は来ていないのか。ファンの子や出迎え隊のみなさんが一斉に見て来るもんだから視線が尋常ではありません。

 その視線から逃げるように昇降口に行く。
 下駄箱で靴を履きかえると、ふと視線が向いたのは神野くんの下駄箱。まだ、上履きが入ったままです。

 せめて、神野くんがいてくれたらな…。

 そう思った思いを振り払って、教室に向かいます。
 廊下で騒いでいる生徒たち。いつもなら、私が通っても誰も気に留めないし道も開けない。

 なのに、今日は私を視線に捕らえるたびに言葉は止み、じゃれて遊んでいた生徒たちは脇による。

「なぁ、あいつが?」

「嵐鬼の総長に話しかけられてた奴だろ」

 こそこそと話す声。丸聞こえですが…。

 話しかけられただけ、だから関係まではばれていない。

 でも、だからこそ危ないんだ。
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