柴犬主任の可愛い人
 
 
…………、


「誰かに、話したかったんです……皆さんお人好しだから、そうやって優しくしてくれること、私見越して……」


あまり私を知らない人のほうが良かった。そのほうがお説教がなく肯定だけをくれると思ったから。後腐れのない、その場かぎりの慰めが欲しかった。


気軽に気楽に大丈夫だよとか言ってもらって、それを足掛かりに、本当に大丈夫になろうと……したん、です……利用……で、すよ、利……よ…………………………………………






明白に覚えてるのはそこまでで。






おっ、おかしい……どれだけどんなふうに酔っぱらっても、自分の行動は完全録画だったはずなのに。


翌日、遅く起きた休日の昼過ぎ、ゴールデンウィークの始まりに、ベットの上で布団にくるまりながら、私は蒼白する。


……なんか、言いたいこと言った後に、主任が熱い玄米茶渡してくれて、なんで主任が我が物顔でお茶入れたりしてるんだ、なんて思ったりしたのは夢? そこから眠くなってテーブルにおでこを擦り付けてグダグダ喋ってたような気もする。おでこが少し痛む……てことは現実かっ!? ……ああ。分からない。


二日酔いがないのはいつもと同じ。けど、どうやって帰ってきたのか記憶がないなんて危険すぎるっ。もしかして送ってもらったり送らせたり……主任とかにっ!? 誰でもよろしくないけどっ!!


ベットから飛び下り玄関に向かうと、ドアの施錠はちゃんとしてあった。


「…………」


とりあえずシャワーだシャワー。そうしたら脳も活性化して、……痴態を思い出すかもしれない。こんな状況にもかかわらずお腹が空いたと、キッチンに置いてあった干し芋をひとつ摘まんでお風呂場に向かった。




そうして、何も思い出せぬまま部屋で体育座りをしたまま時が過ぎて夕方。


覚えてる範囲でも存分に失礼をしてしまったと、私が摘まんだものとは違うデラックス干し芋を風呂敷に包んでから、外出するために着替えた。




< 20 / 149 >

この作品をシェア

pagetop