柴犬主任の可愛い人
大人な御三方は、もうずっと私を自由に泳がせてくれてたみたいだ。沁みる。
いきなり泣き始め迷惑をかけてしまったと申し訳なくなり私がしたことは、何故か、更に迷惑をかけてしまうだけなこと。懺悔が、思ってたことが次々と口をついて止まらなかった。口を挟む隙もなく。
鼻水諸々がお高いティッシュペーパーにより軽減されたおかげで聞き取りやすくなったのは、はたして吉なのか凶か。
「私が望んだこととはいえ……毎日普通に過ぎていきすぎなんです……」
婚約解消なんて、言って回りたいことなんかじゃないのに。理由は分からないままだけど、私がいけなかったんだろう。
「……望んでたけど毎日本当に普通すぎて、悲しいとか思う暇があまりなくて。そしたら、“何かあった私”のほうがおいてけぼりくらたってダークサイドに堕ちちゃって……それが時折私を侵食してくるんです。そんなのばっかで……折り合いのつけかたとか、気持ちの落とし所を全然探れない……」
「もっとちゃんと、曇りなき心で今日だって楓さんをお祝いしたかったんです……もちろん祝ってたけどダークサイドがぁ……っ、ぅぅ私のことなんて関係ないのに……、主任が卑屈にならないように私の話をなんて大義名分なんですぅっ……、勝手に落ち込んでるだけなんです。勝手にしてればいいのにたまに変になる……」
「けど、ここでこんなこと愚痴ろうと思って入ったんじゃないんです。美味しくご飯とお酒を……」
「……っ、嘘でずごめんなさいぃ~、もし赤っ恥晒すようなことになってもいいや、もう二度と来なけりゃいいんだってちょっと思ってましたぁ」
「でもやっぱ嫌ですっ。ここ気に入っちゃったからまた来たいです~……」
「……お料理も、もっと色んなの食べたいし。でも私ひとりじゃあんまり食べられないし、けどこんないいとこ勿体なくて誰彼紹介したくないしむしろ秘密にしたいっ! でも口コミとかってお店には重要だし……」
……もはや、支離滅裂だった。