柴犬主任の可愛い人
「その節はありがとうございました。柴主任」
「その節……?」
そこで勘よくいてくれないのは、果たして天然ものかそうじゃないのか。プライベートの柴主任はちょっと意地悪だからわからない。
わざわざあのときのことを説明するのは気が滅入るけど、それは柴主任のせいじゃないしなあ。
先日のバーベキューは、私が働く職場だけじゃなく社全体のものだった。参加は自由だったけど、うちの部署が仕切る段取りになってたので、知ってる顔は強制参加。私は隣の席の同期広瀬たちと救護の係だった。暑さや飲酒で倒れる人がいるといけないからと念のためのその係は、良かったことに必要がなく終了したんだけど。
気分の悪い人が出てくる気配はなくていいことだ。私たちは当番をひとり置いて、交代でバーベキューへと参加をしに行く。ようやく私の順番になったときは後半で、かなりお腹も空いて仕方なかった。けど、後半ともなると焼かれてるお肉の種類も減り、焼き方も悲惨なウェルダン以上だった。
それでも肉は肉だと頬張ってたところ、知らない男の人に声をかけられた。知らないといっても同じ社の人ではあったけど。
古村ですと名乗られたので私も名乗り挨拶を返すと、古村さんは、挨拶の後の第一声から彼氏はいるのか、はたまた結婚してるのかを訊いてきた。勢いに押されて事実を答えると、そこからいきなり勧誘が始まったのだ。
「是非とも来週ある婚活パーティーに来てくれ!! 後生だ!!」
と、ズボンのポケットから申込書まで取り出して。
我が社は、オリジナル挙式を計画するカップルをサポートする会社で。会場探しから式進行、ドレスも料理も引き出物でも、会場の紹介や橋渡し、望まれれば何でもサポートをする。私はその本部で、備品や引き出物の一括管理を主にしてる。
七年ほど前からは、店舗主軸で地域密着型の婚活パーティーを企画運営する部署も作られた。古村さんはその担当者で、私が勤める本部から一番近い店舗の人だった。来週開催するパーティーの、女性メンバーをもう少し増やしたいらしく、独り身そうな女子社員に声をかけまくってたのだ。