特ダネには真実を
「書かなかったんですね、私のこと。」



言いながら、潮は秀滝の隣に腰掛ける。



記事には、莪椡折姫の名前はあったが南能潮の名前は一切出てきていなかった。



「書いたら追い掛け回されるだろ。他だけじゃなく、ウチの人間からも。」



「そーですね。」



秀滝は、16年前のようなことにしたくなかった。



追い掛け回されるだけじゃない、きっと今後の取材にも支障が出てしまう。



今回現場にいたというだけなので、薇晋も警察発表の際、南能潮の名前は出さないと、配慮してくれた。



「碣屠實墜玄はどうだった?」


「……………。」



さっきまで、潮は警察にいた。



碣屠實に襲われた直後、念の為にと秀滝に付き添われ病院に行った。


検査結果は問題無かったが、聴取が今になったのはその為。



潮が検査を受けている時間を利用して秀滝は記事を書いた……、というか時間が勿体ないから書いて欲しいと潮が言ったからだ。


なので、警察発表よりも記事が先に出るという、特ダネを書くことが出来たわけだが。



「悪い、言いたくないならいい。」



黙ってしまった潮に、軽率過ぎたかと慌てて訂正する。
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