So Far away
______
一年前、私はこいつとデートする途中で汽車に乗った。
人生はじめてのデート。
あの時ワクワクしてたっけ。きっと今と変わらず無愛想だっただろうか。
彼と他愛もないことを話してたら、突然車両が傾いた。
そして、何にも見えなくなった。

目覚めた時には病院にいた。面倒を見てくれてた看護師に事情を聞くと、列車が脱線したらしい。
乗っていた人の多くが大怪我を負い、最悪死んだ人もいるようだ。
幸い、私は手に傷を負った程度で済んだ。

しばらくして家族が見舞いに来た。そこで彼が死んでしまったことを伝えられた。
彼は私を守るように覆い被さったまま息絶えたらしい。その姿はあまりにも凄惨だっと聞く。

どれだけむせび泣いたことだろうか。
どれだけ絶望しただろうか。

退院して彼の葬式を終えてた後、私はショックのあまり何も出来ない人間になった。仕事に行かない。外にも出歩かない。
それで見かねた父親が私に命令したんだっけ。

『遠くにでも出て、もう彼を忘れてしまいなさい。』

拒むこともせず、むしろ私はそれがいいと思って旅に出ることにした。
そして、忘れようとしていた彼に会ったのだ。


「なぁ、聞いてる?」


彼がこちらに声をかけた。
私は沈んだ表情のまま、笑顔を作った。
不自然だ。
でも彼は気に止めることなく笑っている。


「聞いてるよ。早く、話してよ。」


自然と口から言葉が飛び出す。
会話の内容も、あの事故当時のまんまだ。
< 6 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop