So Far away
「そんでな、俺言ったんだよ。」

会話が続く。
私はもう彼の言葉など聞いてない。
窓に寄りかかって、トンネルのライトばかり見ている。
相づちなんて打たなくてもいい。
当時そのままの会話だから、あのときの自分が返事をしている。
聞き流しても聞いてることと同じだから。

くだらないことばっか喋ってたから、話の内容は覚えてなかった。

ただ不機嫌ながらも、心の何処かで楽しんでたことは覚えてる。

彼は子供のようなやんちゃな男で、面白い人だった。
空気を読まないし、何をしでかすかわからない。
最初呆れてた自分も、途中からその人格を飽きず好いていたことを思い出した。

『好き』とか

『愛してる』とか

恋人らしいことはあまり言われたことがない。
恋色じみた言葉などなくても、彼は私を愛してくれていた。
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