終われないから始められない


3月の間は、配属された支店でも“研修"の文字が入った札をつける。

服装もまだ高校の制服のままだ。3月一杯はまだ高校に在籍しているからだ。

店舗内で“制服"は妙に浮く。

まだ何もまともに出来ないから、研修でもらった印刷物に目を通したり、札勘の練習をしたり。

いらっしゃいませ、ありがとうございました、明るく元気にお願いしますと言われる。

「ありがとうございます○○銀行△△支店です」

ここまで言って用件を伺い、電話を取り次ぐ。

「意味は解らなくても、相手の名前をきちんと聞いて、言ってる事をそのまま伝えてくれたら解るから、大丈夫よ。沢山、電話を取っていれば、段々解ってくるから」

教育担当の人に言われる。

私達が仕事を覚えて一人前に仕事が出来る頃には、寿退社される予定だと言う。
それは来年らしい。ほぼ一年しか無い…大変だ。


何が凄く重要なモノで、そうでも無いモノとの判断がつかない頃は、ひっそり涙した事もあった。

後になれば、内々の事で、泣くほどの事では無かったと解るのだけど。

「制服が届きましたよ。サイズ確認してくださいね」と渡される。


来週から4月。
いよいよ、同じ制服を着ての仕事が始まる。

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