終われないから始められない
「対応した本人は通常対応だと思ってる。だから気がつかないし、当然、悪いとも思わない。
互いに“温度差"もあるのかも知れない。
窓口に行ったけど、感じ良く親切にして貰ったよ、なんて言って貰えたら、対応してくれたのが誰だか解らないけど、有難う!って思うんだ。
大袈裟かも知れないけど感謝したくなる。
それだけ窓口は大事。
そして、貴女のような人が居る窓口なら安心だという事です。
ごめん、なんだか気合い入れて一方的に話してしまって」
愛ちゃん、未来さんがチラチラと橘さんを気にしてる。
どうやら林、森コンビに押され気味のようで、落ち着いた橘さんと話したいようだ。
その様子を察知したのか、村瀬さんがやんわりと二人の視線を遮る。
「そろそろ鍋にして、締めまでいきましょうか。
愛さん、未来さんは、麺がいいですか、それとも雑炊がいいかな」
なんて言ってる
橘はまだまだ話し足りない。折角のチャンス、存分に思いの丈をぶつけさせてやりたいんだ。
「おい、林、森。」
俺は耳打ちする。
「愛さん、未来さんを次に誘え」
「ラジャー!!」
戦体モノのヒーローか…ま、いい。
「それじゃ俺達はちょ〜っと抜けますんで」
愛ちゃん未来さんを連れ立ち、そそくさと出ていく。
「ご馳走様でした、また誘ってくださいね」
ちゃんと次を押さえようとするところは流石だ。女子の鏡。
「さてと。
会計は済ませてある。
俺も可愛い娘が待ってるから帰るとするよ。
橘、谷口さんを頼むな」
「ああ。有難う村瀬、気をつけて帰れよ」
村瀬さんは軽く手を上げて帰って行く。
あ、みんな帰って行くなんて…。
「谷口さん、改めて、もう少しいいですか?
きちんと送りますから」