蜜愛フラストレーション


すぐさま評価を全面否定しようとしたが、それより早く「でも」と再び鈴は続きを話し始めた。

「でもね、やっぱ私じゃ無理!輝にも言われたんだ。——“良いとこも悪いとこも含めた、鈴の個性を磨けば良い”って。
単純だけど、それから自分の個性を大切にして頑張ろうって思えたんだ。
萌ちゃんは相手を先回りして気遣ってくれるけど……、あんまり溜め込み過ぎないで?ほら、我慢は良くないし!
些細なことでも、もっと北川さんに言ったほうが良い気がするなぁ。多分、すっきりするよ?」

小動物のような幼さの残る顔立ちなのに、その瞳の奥は輝きと強さを秘めている。

年齢を重ねるごとに諦めることにも慣れて。中途半端を免罪符にしている自分が恥ずかしい。

「うん。でもね、私は出来た人間じゃないよ?
大人な考え方なんて未だに出来ないし、いつも斜に構えているだけで。だから、素直で皆に愛される鈴のことがずっと羨ましかったの。
……実はね、優斗にこの前言われたんだ。——やっと本音が聞けた、って。
それに、あの時もそう……。もうちょっと彼に寄り掛かれてたら違ってた?とか思ったりして。うん、それこそ今さらだね」

白状し終えた私は、真っ直ぐにこちらを見ている彼女に苦笑を浮かべた。

「私と萌ちゃんって、足して割るとちょうど良さそうじゃない!?」

「鈴の良さを打ち消したら、それこそ稲葉さんが怖いよ」

「其の時は其の時!輝をもっと惚れさせるから任せて!」

「おー、稲葉さんに聞かせてあげたいわ」

「じゃあ、今夜言ったら結果報告するねー」

鈴のことを羨んだ時期はあっても、妬んだことはない。だって、晴れやかな笑顔を見たらそんな気も起きなかったから。

彼女の持ち前の良さは稲葉さんと付き合い始めてからさらに磨かれている、これは紛れもない事実。


彼を惚れさせる、と自信満々に言い切った鈴。かたや、相手を信頼しきれずたたらを踏む臆病な私。

曖昧な状態をもどかしく感じていたのに。優斗との別れを次第に恐れるようになり、根本的な問題を解決出来ずにきた。

けれども、愛情溢れる鈴のおかげで目が覚めた気分。それどころか、出口の見えなかった暗いトンネルに光が差したようだ。

——感情と過去の整理をしたい、と漸く決心させてくれたのだから。

想いを告げることに躊躇うのなら、まだ言い時ではない。こんな言い訳に甘えていられるのも、あと僅かだろう……。


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