蜜愛フラストレーション
「つまり、冷蔵庫の補充をされたと。お疲れ様です」
もちろん彼女が無理やり押し掛けていたり、ふたりが本当にそういう関係な訳でもない。
「でも、アイツ仕事が詰まるとロクな物食べないしぃ、食に頓着ないよねぇ。……ったく、自分の歳を考えろっての」
健康志向でもある料理上手な彼女はあれこれ言いつつも、多忙な親友の体を心配して常備菜などを彼の冷蔵庫に入れに行く。
それもあって、彼の自宅のスペアキーを持たされているのだ。彼女いわく、面倒な男のお守り役らしいが。
付き合っていた頃は優斗の部屋で料理をしていたし、たまにこっそり社内で差し入れをすることもあった。
けれども、今は肌を重ねるだけの場となり、当然そこで食事はしない。……それが私なりの線引きだったのだ。
「萌ちゃんが作ってあげてよ」
そんなことまで話していないのだが、彼女はお見通しで。このひと言を掛けられると、いつも私は苦笑いをしてきた。
その後、ユリアさんの運転で、青山にある彼女が経営する複合型の美容サロンに到着。
ここは彼女の実家が一等地に所有する物件のひとつ。そこで彼女は経営と運営を一任されているそうだ。
ビル内には美容院、ネイルサロン、エステサロン、美容皮膚科、審美歯科と多方面から“美”をサポートし、最高の時間を提供。相場より少し値段は高いが、意識の高い女性から厚い支持を得ているとか。
そんなお店で、まずは美容院でカットとトリートメントを受ける。人気スタイリストさんが今回も担当して下さった。
こちらの好みは知らせ済みなので、乾物は今日もお任せ。まとめ髪が出来ればいい、とオフィス基準な点に彼女は毎回呆れている。
しかし、さすがはプロ。伸びかけの髪は肩下の長さに整えられ、見た目も夏らしく軽やかに。
一見変わっていないようで全く違う。トップ・スタイリストの素晴らしい腕前に今回も感動する。
さらに紫外線や日頃の怠慢で傷んだ髪に高級トリートメントはよく効く。まるで一本一本が糸のような艶やかさを取り戻した。