蜜愛フラストレーション
美容室をあとにし、すぐ上階のネイルサロンでペディキュアとハンドケアを。さらに上階の美容皮膚科でビタミン点滴とサプリメントを処方して貰う。
締めにエステサロンへ向かい、フェイスとボディを隅から隅まで容赦なく磨き上げられた。
すべてオーナーのユリアさんが付き添ってくれるため、庶民にはおよそ似合わないVIP席ばかりなのが居た堪れない。
——それ以上に、代金はすべて払うと言っても彼女が拒否するのが毎回の悩ましい問題。
ネイルやシャンプーやらは新人教育の一環、エステサロンはモニターのようなもの。費用も実質、美容皮膚科とカット代しか掛かっていないと言い張る。
「この私の好意をドブに捨てんの?ん?」
しかも、最後は決まってこう言う。女性らしさを消したユリアさんのドスの利いた声と視線に屈する羽目になるのだ。
各お店のモデル(宣伝媒体)になるにしても、色々と足りないので申し出ることも出来ず。
いつもすべて終わるのがランチタイムの頃合いなので、せめてものお礼にと食事代を出している。
「今日はお鮨ね〜」
「ユリアさん、お店ってこの近くにあるの?」
ビルを出た時刻は13時近く。ランチタイムの混雑が少し緩和した頃だろう。
「でも、今回もほんとツルッツルになったわね〜」
エステ後にメイクもして貰ったので、肌の欠点は見事に隠れている。ただ、隣からまじまじと見られるのは気恥ずかしい。
手厳しいユリアさんもこの日ばかりは優しい。小さく頭を下げてから彼女に笑いかけた。
「いつも感謝してます。ありがとう」
「ね?磨かないのは人生損するって言ってるでしょ?」
「はーい、先生には敵いません」
そんな軽口を叩いたために、脳天に容赦なくチョップを入れられてしまった。