蜜愛フラストレーション
ただ、重箱の隅をつつかれたらそれなりの牽制は忘れない。営業スマイルを浮かべ続ける私に、やがて彼は両手を上げ降参の意を見せた。
「うん、そうだね。ごめん、今の俺ほんと浮かれっぱなしだ」
「そうですね、浮かれっぱなしで甘さに毒されそうです。
でも、私ほんとに反省してきたのに。……もう振られると思ってた」
本音を漏らした声は頼りないもので。俯き加減になるのは自信のない証拠。……仕事だったらそつなくこなせても、恋愛は儘ならない。
「萌が反省するところはない。不安にさせてごめん。でも、俺の気持ちは変わらないから。さっきもそう言っただろ?
俺が振られることはあっても離れることはないって、ずっと言ってきたんだけどな。肝心の本人に伝わっていないのは努力不足だ」
「……ほんと自分勝手」と、とても反省しているとは思えない顔つきの男に溜め息を吐く。
「そうだね。よくご存知で」
「……ユリアさんには負けますぅ」
「萌しか知らないことがあるのに?」
そこで真綿に包むように、そっと優しく抱き締められた。腕の中に閉じ込められ、また少し強まる力が心地よい。
これで怒りどころは敢えなくゼロ、ここまで彼にのめり込んでいる事実に笑いたくなってしまう。
スーツを着て次々と功績を上げていく仕事中の彼。その本質は掴みどころがないし、今みたいに大事な場面で甚振る一面だってある。
それでも、否。だから私は、プライベートを知ったからこそ、好きで好きでどうしようもなかったのだろう。
はぁ、と嘆息した私の髪の手触りを楽しむように撫でる優斗。……この人、こっちの惚れた弱みにつけ込んでるよね、思いきり。