蜜愛フラストレーション


「……は?」

ようやく平常心を取り戻せたところで呆気なく混乱の渦へと招く男に対し、眉根を寄せて真意を問う。

「そうやって怒ってくれるのも嬉しいよ。萌が自然体でいてくれるってことだしね。
あー、震えた声も可愛いすぎ。エレベーターの中でどれだけ我慢してたか分かる?悪いけど、今日は何を言っても諦めて?」

濃厚アイスクリームをホイップクリームで飾り立てたパフェのような、甘さの極みをいく舞い上がった発言に唖然とする私。

それを口にした人物はすべてを味わい尽くすかの如く、陶然とした表情を浮かべて熱視線を送ってくる。

「……よく事故んなかったね」

この時点でツッコミどころは山ほどある。しかし、光線を受け続ける私の口から発せられたのはあまりに的外れなもの。

「大事な大事な萌を乗せてるのに危険を冒すわけないだろ?あ、大事なことは二度言ったから」

「過去と現在を照らし合わせるとその発言は矛盾してますが。あ、私も大事なことは二度言いましょうか?」

やたらと真剣な面持ちで返って来た言葉には、つらつらと嫌味混じりの業務スタイルで応酬することが叶った。

そう、こんな時にもただ熱に冒される年齢ではない。もしくは、対峙する相手との、先の見えないやり取りで冷静になれるのだろうか。


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