bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
そう言って俺の斜向かいに座った香奈子と目が合うと、嫌でも会社の話になってしまう。
「ありえないよな。2ヶ月半で新人が辞めるなんて」
「お前、もしかしてとうとうパワハラで新人リタイアさせたの?一馬、お前のやり方、パワハラ擦れ擦れだと思うんだよなぁ。俺」
勝手に想像して、勝手に話を進める圭吾を無視する形で、香奈子が続ける。
「まぁ、出来てたものは仕方ないじゃない。人事部からお叱りでもあった?」
「今回のことは、俺も金曜の朝に知ったから。何も」
「ああ、妊娠してたの。なるほど、なるほど」
時折、会話に口をはさんでくる圭吾をよそに俺たちは話し込む。
「まぁ、妊娠して身体きつかったのもあるかもしれないけどさ、あの子。そんな頑張るような子じゃなかったから、ついていけなかったのかも。」
「そうなの?」
俺の言葉に香奈子が意外な顔をしていた。
「容量悪いのもあるんだろうけど、書類の提出物はぎりぎりか少し遅いしさ。勤務時間中、結構集中してなかったでしょ。まぁ、結婚で悩んでたのかなと、今になっては思うところもあるけど。それに、」
「それに?」
「それに?」
珍しく内海夫妻の声が揃う。
「朝、安藤に教えてもらいながら、二人でよく雑務してたんだけどさ。安藤と先月から1日交代、今月はあの子だけになったらさ。あの子、それまで安藤と一緒に7時に来てたのに、安藤がいないと8時前出勤。朝の雑務終わったら、化粧直しに席外してるし。だから、仕事の段取り悪いんだろうなぁって思ってたところ。あとは、コーヒーまずいし。」
最後の一言は、香奈子に怒られると思って、咄嗟に口ごもってしまった。