僕を愛した罪
「星夜くん。
聞いてもらえるかしら…?愛ちゃんのこと」
「…僕で、良いのですか?」
「星夜くんだから話すのよ。
愛ちゃんのことは次郎さんに任せているから、きっと来る心配はないわ。
いずれ傍にいることがなくなっても、今は傍にいるんだから。
星夜くんに聞いてほしいわ」
「……わかりました」
僕が頷くと芽衣子さんは立ち上がり、お茶を淹れてくれました。
小さな湯飲み茶碗に淹れられた、湯気の立つ緑茶。
僕も芽衣子さんも一口飲んだところで、彼女の過去が語られました。
「愛ちゃんには中学生の頃、付き合っていた彼氏がいたのよ。
政志(まさし)っていうんだけどね…。
彼は幼い頃にご両親を亡くされて、
ろくに子どもたちのお世話をしない施設に引き取られたの。
信頼できる大人も、友達もいなかった彼にとって、
愛ちゃんは初めて好きになった異性だったの。
その頃まで彼氏がいなかった愛ちゃんは、政志くんからの告白を受け入れた。
最初の方は本当に仲が良くて、家に遊びに来たこともあったわ。
だけど途中から…愛ちゃんが帰宅しない日が続いてね。
連絡もなしに遅くなるなんてこと、今までなかったから、不審に思って警察に連絡して、居場所を突き止めてもらったの。
そうしたら愛ちゃんは…政志くんが独り暮らしをするアパートの中で、傷だらけで布団の中にもぐっていたの…」
哀しそうに俯く芽衣子さん。
僕は何も言えませんでした。