ベビーフェイスと甘い嘘

「お疲れ様でしたー」

眠そうに目を擦りながら、夜勤明けの九嶋くんが帰ろうとしている。

「あっ、九嶋くん」

その背中に初花ちゃんが話しかけた。

「何?相沢」

「今日の鞠枝さんの送別会、九嶋くんも誘えなくてごめんね」

今日のメンバーは、鞠枝さん、初花ちゃん、店長、唯ちゃん、私の5人で現オーナーの経営している居酒屋に集まることになっていた。

店長が入ってるってことは九嶋くんは当然夜勤で店に残らないといけない訳で、初花ちゃんはそれをずっと気にしていた。

前のオーナーの元で働いていて、今のオーナーの元に残ったのは私と初花ちゃんと九嶋くんだけだ。特に九嶋くんは長く働いているから、初花ちゃんが気にするのも当然のことだった。

「気にしなくていいよ。鞠枝ちゃんとはまた会えるでしょ?ここにも遊びに来そうだし。それに4月になってから忙しくて店長や茂木の歓迎会だってしてないだろ?ま、夕勤の野郎達はいいとして……茂木は長くいそうだから歓迎してやれよ」


九嶋くんはそう言って笑った。まるで社員のような気の回し様に思わず感心してしまう。初花ちゃんも同じ事を思ったようで、そっかー私って気が利かないなぁ……と反省していた。


「まぁ、存分に親睦を深めてきなさい」


そう言って初花ちゃんに向かって優しく笑いながら、九嶋くんは帰って行った。
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