ベビーフェイスと甘い嘘
「あっ!ダメだって、ねーさん。動かないでよ!」
……そう言われて、もう10分は経ってるよね。
おまけに鏡も見せてもらえないから、自分が今どうなっているのかも分からない。
「ねぇ、これいつまで続くの?」
「飽きるの早いって。普段化粧何分で済ましてんの?」
「うーん……5分くらい?」
「はぁー??5分で何ができんの?……ラインは引いてるみたいだけど……下地は?ファンデは?」
「朝にそんなに丁寧に化粧する時間は無いの。下地は全部一緒になってるのを使ってる。ほら……えっと、何だっけ?何とかのクリームってヤツ」
「もしかしてBBクリームのこと?名前がすぐに出てこないのってそろそろヤバイんじゃないの?あと3分だけ我慢して欲しいなー。俺に借りを返してくれるんだったよね?」
ニヤニヤ笑いで言われてしまった。
……悪かったわね。物の名前がすぐ出てこなくて!
物どころか、人の名前も顔も覚えるのが大変になってきたけどね!
ちょっとムッとしたけど、貸しの事を言われたら黙るしかない。
憮然とした表情で、目の前で忙しそうに手を動かしている九嶋くんを見る。
『祭りの時さ、フルメイクさせてよ。もちろん浴衣で。これで借りは無しってことで』
そう言われたから、こうして着せられるまま浴衣を着てじっとしてるんじゃないの。