ベビーフェイスと甘い嘘

「あっ!ダメだって、ねーさん。動かないでよ!」

……そう言われて、もう10分は経ってるよね。

おまけに鏡も見せてもらえないから、自分が今どうなっているのかも分からない。

「ねぇ、これいつまで続くの?」

「飽きるの早いって。普段化粧何分で済ましてんの?」

「うーん……5分くらい?」

「はぁー??5分で何ができんの?……ラインは引いてるみたいだけど……下地は?ファンデは?」

「朝にそんなに丁寧に化粧する時間は無いの。下地は全部一緒になってるのを使ってる。ほら……えっと、何だっけ?何とかのクリームってヤツ」

「もしかしてBBクリームのこと?名前がすぐに出てこないのってそろそろヤバイんじゃないの?あと3分だけ我慢して欲しいなー。俺に借りを返してくれるんだったよね?」


ニヤニヤ笑いで言われてしまった。

……悪かったわね。物の名前がすぐ出てこなくて!


物どころか、人の名前も顔も覚えるのが大変になってきたけどね!

ちょっとムッとしたけど、貸しの事を言われたら黙るしかない。

憮然とした表情で、目の前で忙しそうに手を動かしている九嶋くんを見る。


『祭りの時さ、フルメイクさせてよ。もちろん浴衣で。これで借りは無しってことで』


そう言われたから、こうして着せられるまま浴衣を着てじっとしてるんじゃないの。
< 178 / 620 >

この作品をシェア

pagetop