ベビーフェイスと甘い嘘
「はい、仕上げ。グロス塗るから上向いて」
やっと終わりかとほっとしながら顔を上げると、「もうちょい上ね」と言われて顎を持ち上げられた。
唇よりも、指先の感触と近すぎる距離が気になってしょうがない。
今日はコンタクトをしてるはずなのに、近すぎるってば。
……メイクってこんなに近づいてしなきゃいけないものなの?
逸らしていた視線を上げたら、九嶋くんとばっちり目が合ってしまった。
慣れない距離に戸惑ってることなんてお見通しなんだろう。からかうような視線を向けながらも、楽しくてしょうがない、といった感じでくすくすと笑われてしまった。
「あー、九嶋くんが茜ちゃん襲ってる!」
芽依がそんな私達を見て、ニヤニヤしながらこっちにやって来た。
「何言ってんの、芽依さん。襲いたいんだったらこんなに丁寧にメイクしませんよ。浴衣だって、もうちょいゆるーく着せたほうが脱がせやす……」
「ちょっと!こども達の前で何言ってるの!……芽依。あんたもふざけた事言わないの!」
怒る私に、芽依はゲラゲラと笑った。
「大丈夫だって、茜ちゃん。ほら、二人ともはしゃいじゃって聞いてないもん」
人(主に……私?)をからかうのが好きという点で、この人達は気が合うのだろうか。
ほぼ初対面に近いはずなのに、二人はあっという間に仲良くなってしまっていた。