ベビーフェイスと甘い嘘

「あい、これがいい!」

ようやく追い付いた先は『数字くじ』の出店だった。
どうやらもうくじを引いてしまったらしく、翔の手にはエアガンが握られていた。

亜依も『ハズレ』の賞品の中からキラキラと輝くオモチャの指輪を探しだして早速指にはめていた。


「あいちゃん、かわいいー。けっこんしきのゆびわみたいだね。おばちゃんとおそろいだねー」

「うん。ママとおそろい。あい、おひめさまになるのー」


亜依がお姫さまなら、翔は王子様か。


無邪気な二人のやり取りに微笑みながら、自分の左手に視線を落とす。

コンビニでは結婚指輪も含めて、アクセサリーを付けることはできない。それでも休日には、結婚指輪を必ず着けていた。


今日はわざと何も着けずに外に出た。


もう、空しい形だけの愛に縛り付けられるのはごめんだった。



『お姫さまは王子様から愛の証の指環を受け取って、

それから二人はずーっと仲良く暮らしましたとさ』


ただの物語ならこれでおしまい。めでたしめでたしの、ハッピーエンドだ。


でも人生はそうはいかない。


二人が結ばれるまでの年月より『暮らしましたとさ』のほうが遥かに長い。


私は今、ハッピーエンドの向こう側にいる。


そこは死ぬほど退屈で、


そして死ぬほど哀しい気持ちになる場所だった。

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