ベビーフェイスと甘い嘘
***
駅前近くの神社の周りは多くの人で賑わっていた。
花火が上がる羽黒川とは少し離れているけれど、神社は高台に立っているので、そこからは花火がとてもよく見えるらしい。
高台の下には駐車場があって、そこから神社までは皆徒歩で向かう。その道の途中には、沢山の出店が軒を連ねていた。
「ママ、わたあめたべたい!」
「くじ、ひいてもいいー?」
お子様チームは早くも興奮気味だ。
いろんな店に翻弄されて、目移りしまくっている子ども達から目を離さないようにと、こちらも必死になってしまう。
こういう時の浴衣はちょっと不便だ。
裾が絡まってしまうので歩を急ぐこともできないし、足下も下駄だから走る訳にもいかない。
「子ども達見てるから、ゆっくり付いて来てよ」
妊婦と着なれない浴衣に手こずっているコンビに笑いながら声をかけて、九嶋くんは人混みの中に紛れそうになっている翔と亜依を見守ってくれていた。
「智晶ちゃん、優しいねぇ」
芽依はにこりと笑顔で言ってから、「子ども好きってのもポイント高いよね」とわざと耳元で内緒話をするように囁いた。
「……何のポイントよ」
呆れながら呟いた言葉は、祭の喧騒の中に消えて誰の耳にも届かなかった。