ベビーフェイスと甘い嘘
「『still』は智晶さんにとって特別な場所だからね。ヤスさんは智晶さんの味方だから、もう勇喜と奈緒美ちゃんには来ないでくれって言ったんだ」
「直喜は言われなかったの?」
「俺は中立だから。狡いかもしれないけど、勇喜と奈緒ちゃんの気持ちも分かるし、智晶さんの気持ちも分かるからどっちの味方にもなれないんだ」
「でも茜さん達には全く関係ないことだったから……今日は巻き込んじゃってごめんなさい。智晶さんが途中で冷静になってくれて良かった。あのまま話を続けてたら間違いなく二人とも倒れてたと思う」
「……そうかもね」
九嶋くんの血の気の引いたような顔色を思い出した。
人が変わったように冷たく話をしていたのは、たぶん取り乱していただけだと思う。
「ほら、あのテントみたいになってる所がヤスさんの店」
直喜が指差した先に、他の出店とはちょっと趣が違う群青色のテントを見つけた。