ベビーフェイスと甘い嘘
「……嫌いじゃないよ」
頬に触れる手は少しだけ温度は低いけど、ちゃんと温かくて、私の形を確かめるようになぞるその指先はとても優しい。
捉えどころがなくて、いつも飄々としていて……
直喜のことは分からないことが多いけど、こうして身体に触れられることも、心に近づかれることも決して嫌だとは感じない。
「俺ね、やっぱり茜さんのこと放っておけない。あんなに悲しい顔で涙を堪えてる茜さん見たら、我慢できないよ」
「もう涙を止めてあげるなんて言わないから。誰の前でも……家族の前でも泣けないんだったら、俺のとこで泣いてよ。今みたいに」
「茜さんの大切にしてるものを壊すつもりはないよ。……ただ俺が茜さんのそばにいたいだけなんだ」
ーー『壊してもいいのに』
とっさにそう言いそうになった自分に驚いた。
側にいたいと、そう言ってくれるその気持ちが嬉しかった。
どうして私は、直喜に見つめられると目を逸らすことができないのか……
直喜は私のことをどう思っているのか、その気持ちをどうしても知りたいと思ったのは……
今まで考えないようにしていただけで、ほんとうはとっくに気がついていた。