ベビーフェイスと甘い嘘

「あと……」


まだあるの?!


「気まずい思いをしているんだったら……それを嫌だと思っているんだったら、何でもいいから取っ掛かりを探して話をすることも必要だと思いますよ」


「要は、自分から折れたほうが『仲直り』はしやすい、って事です」


「……っ」


核心を突かれて、みるみる顔が真っ赤になっていくのが分かった。何もかも分かってるくせに、何があったか知りませんがなんて、ほんと人をバカにしてる。


ノンフレームの眼鏡の奥の、人の心を見透かすようなその視線が本当に嫌だ。


……どうしたらいいのか分からなくなってしまっている私の気持ちだって、きっとお見通しなのだろうから。


***


「アイスコーヒーのRサイズをお願いします」

フライヤーを終え、唯ちゃんが掃除に行き、私一人になったレジにおなじみの声がかかる。


「いらっしゃいませ。……今日はこっちのほうの配達だったんだ」


「うん。お盆だから、あまりお弁当は出ないんだけどね」


以前と違うのは……私が、直喜が来るのを心待ちにしてしまっているということ。


でもそれは絶対に表に出してはいけないし、口にすることも許されない。


だから私は気持ちをごまかして、ただひたすら嘘の言葉を並べる。
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