ベビーフェイスと甘い嘘
直喜は(たぶん)真っ赤になっている私の頬を指で軽く挟むように触れながら、じっと私の目を見つめて言った。
「いつも茜さんに会いに来てるの、俺は。セルフじゃなくて茜さんが用意してくれたコーヒーが飲みたい。他の誰でもなくて、茜さんがいいんだよ。……分かった?」
いつもの私だったら「店内で何やってるのよ!」と怒っているところだけど、その視線と言葉に押されて、何も言葉が出て来なかった。
代わりに頭が取れて飛んで行くんじゃないかってくらいにブンブンと勢いよく頷いた。
「よく分かったみたいだね。……またね」
にこやかに手を振りながら、直喜は帰って行った。
まだ頬に直喜が触れた感触が残っている。……誰に見られるか分かんないのに、信じられない。
だけど……焦るよりも先に、それを喜んでしまった自分がいちばん信じられない。
「……怪しいなぁー」
思ったより近くに聞こえたその声にビクッと身をすくめて振り返る。
「ゆっ、唯ちゃん……」
掃除、終わったんだ……。
いつの間にか私のすぐ真後ろに立っていた唯ちゃんは、直喜の去って行った方向をじっと眺めていた。