ベビーフェイスと甘い嘘

いつもはこう言うと私が黙りこんでしまうから、面倒な話を終わらせたい時には、修吾は決まって「はっきり言えよ」と口にする。


「……火の無いところには煙は立たない」


「……はぁ?」


「人の口に戸は立てられないって言ってるの。まさか私が何も知らないなんて……さすがに思ってないよね」


「この半年……柏谷の家で噂話を聞かされてから、不自然に増えた出張も、残業にも……何も言わないようにしてきたけど……もう限界」


「私だけなら、まだ我慢ができたの。でもね……翔が傷つくのだけは我慢できない」


とっくに気が付いていたのに、見えないふりをしていた。口にしてはいけないことだとすら思っていた。


言葉にするのなんて、こんなに簡単な事だったのに。



……修吾は私を、信じられないものを見たような目で見ていた。


驚いたはずだ。



出会ってから今まで……修吾にとっての私は、口答えもしない従順な女だったはずだから。


「お前こそ、どうなんだよ」


「……えっ?」


「結婚してから、芽依さんの所以外にろくに出掛ける用事の無かったお前が……ここ最近夜に出掛けたりして。服装だって化粧だって、ずいぶん変わったじゃないか」


「この前の夏祭りだって、ほんとは誰と行ったんだ?わざわざ指輪まで外して、浴衣なんか着て。……男の為に着飾ったんじゃないのか?」

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