ベビーフェイスと甘い嘘

夏祭りの日に会った時、揃いの色合いの服を着てまるで夫婦のように寄り添っていた二人の姿を思い出した。


5年前、図書館の裏口で泣いていた私を直喜が見ていたのも……やっぱり、奈緒美ちゃんのことを迎えに来ていたからだったのかな……


思えば、直喜はいつも奈緒美ちゃんの事を気にしていた。



結婚式で「旦那さんのほうのお友達ですか?」と聞いた時、少しだけ苦し気な表情を見せたこと



お兄さんの奥さんなのに、親しげに「奈緒ちゃん」と呼んでいること



鞠枝さんの送別会の日に、直喜が急に態度を変えて怒ったのだって……奈緒美ちゃんの話題がきっかけだった。



何より直喜が結婚式で『しあわせ』から逃げたいと思っていたのは……奈緒美ちゃんのしあわせそうな姿をこれ以上見たくない。そう思ったからじゃないのかな……


『あなたの事が気になった』



そんな嘘の言葉に救われて、しかも好きになってしまうなんて……私はほんとうにどうしようもなく馬鹿な女だ。



直喜の事を好きだって認めてしまったことで、私はまた誰かの代わりにされている自分に気がついてしまった。



また誰にも求められず、気がついてもらえない自分に戻ってしまう。



恋をして……孤独を知るのはもうたくさんだと思っていたのに。
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