ベビーフェイスと甘い嘘
意識してしまった恥ずかしさに思わず瞳を反らすと、そのまま首筋に顔が近づいてきた。
九嶋くんの指先が……手首から腕を辿って肩を滑り、首筋をなぞりながら私の髪をかき上げていく。
「……ねぇ」
露になった耳元に囁かれて、思わず身体がびくりと揺れる。
「お互いの傷をさらけ出して……楽になりたいと思わない?」
……楽になる?
それって、傷口を舐め合おうよってこと?
……そんなのは苦しくなるだけだよ?
それに、あなたには大切な人がいる。
今でも心のバランスが取れなくなるくらい……忘れられない人なんじゃないの?
そう思ったのに、声にすることはできなかった。
うつ向きながらもようやく口から出たのは「そんなの……ダメだよ」という否定にしては弱すぎる言葉だけだった。
「茜さん」
不意に名前を呼ばれたことに驚いて顔を上げると、思ったよりも間近に九嶋くんの顔があった。
可愛らしいのに整った形の瞳が、じっと私だけを見つめている。
その近すぎる距離と見つめられている恥ずかしさで、耳まで血が上ったのがはっきりと分かった。