ベビーフェイスと甘い嘘
九嶋くんの質問に、思わず息を飲んだ。
何故かその瞬間、鞠枝さんの送別会の日に、九嶋くんに『夢をなくしたの?』と聞こうとして一瞬躊躇ったことを思い出した。
……あんな言葉はやっぱり言うべきじゃ無かったのかもしれない。
やっぱり、私達は似ているんだ。だから、その痛みを隠していてもお互い敏感に感じ取ってしまう。
あの質問をした瞬間から、私は九嶋くんの心に一歩踏み込んでしまったのだろう。
そして……
たぶん今、私は彼の心の中のもっと深い部分に触れてしまったんだ。
……そのままお互いしばらく無言のまま見つめ合っていた。
これ以上目を合わせるのも、会話を続けるのもまずい。そう思ったけれど……
一歩遅かった。
話を切り上げようとした私よりも、先に行動に移したのは九嶋くんのほうだった。
ゆっくりと距離を詰められて……思わず後ずさった背中にトン、と壁が当たる。
すぐに手首を掴まれて、それ以上逃げられなくなってしまった。
「ぅあっ……」
きつく掴まれた訳ではなかったのに、思わず声が洩れてしまう。
触れられた部分から彼の熱が直に伝わってくる。その熱は、あっという間に私の全身へと広がっていった。